2025.8.03
SUNDAY MORNING WAVE
津波リスクへの「パラメトリック型保険」の手法を開発
2025年8月3日ON AIR「地震に自信を」
津波工学研究室の学部生 三木優志さんが中心に進めた研究成果をご紹介します。
近年、気候変動の影響により自然災害による経済損失は増加し続けています。しかし、災害リスクに対する保険の整備は十分とは言えず、補償ギャップ(経済損失と保険金支払いの差)が世界的な課題となっています。この課題に対し、「パラメトリック型保険」は有力な解決策のひとつです。
パラメトリック型保険は、事前に定められた災害指標(震度や津波の高さ風速)に基づいて保険金が支払われる仕組みであり、従来型保険では補償対象外となる損失にも対応できるほか、基準が明確なため透明性が高く、災害後の現場での被害査定や調査が不要なので迅速な支払いが可能です。日本では2018年から取り扱いが始まりました。
一方で、パラメトリック型保険ではベーシスリスク(実際の損害と保険金支払いの不一致)が大きな課題となっています。支払い金額の不足は災害復旧の妨げとなり、一方で過剰な支払いは保険料の上昇に繋がる可能性があります。また、津波のように複雑で広域な自然災害に対しては適用が難しく、普及は限定的でした。
本研究ではこの課題に対し、最適化モデルによってベーシスリスクを最小化する手法を提案しました。津波リスク評価には確率論的津波リスク評価(PTRA)を採用し、将来発生し得る複数の津波シナリオに基づき、損害額と保険金支払いの関係を定量的に分析する手法です。津波の高さや浸水深といった支払いのための指標を用いて、最適な支払い条件を導き出しました。
text by 今村文彦
SUNDAY MORNING WAVE
●日時:毎週日曜日8:25~8:55●出演:今村文彦、板橋恵子