2023.12.16
ゴスペルの女王
マヘリア・ジャクソン、Xmasを歌う
33rpm SEASON III(2023年12月23日OA)No.200
マヘリア・ジャクソン『きよしこの夜』
アナログ音源専門プログラム「33rpm」。
12月は冬に聴きたいレコードを紹介しています。「SOUNDS OF WINTER」先週に引き続き、今回もクリスマス・アルバムをお送りします。今日紹介するのはゴスペルの女王、マヘリア・ジャクソンの『きよしこの夜』です。
クラシック音楽や讃美歌と、黒人音楽が融合したゴスペル。ゴスペルは教会の祈りの音楽から発展し、ソウルやロックにも影響を与えるほどの力を持ち、アレサ・フランクリンやサム・クックなど、優れたシンガーを世に送り出してきました。
その代表的なシンガー、マヘリア・ジャクソンは1911年10月26日ニューオーリンズの貧しい一家に生まれました。牧師だった父親について教会の礼拝に行くうち、聖歌隊として歌い始めます。16歳で出稼ぎのためシカゴに出て、バプティスト教会の聖歌隊に参加。
彼女の実力は噂を呼び、ジョンソン・ゴスペル・シンガーズに参加してプロ・シンガーとしてのキャリアを踏み出しました。1937年、初のソロ・レコーディングを行いますが、音楽では食べていけずに美容室を開業。しかしこの曲がきっかけで音楽業界に噂は伝わり、コンサート活動は続けていました。
1946年にアポロ・レコードと契約。翌年リリースした「ムーヴ・オン・アップ・ア・リトル・ハイヤー」がミリオン・セラーとなり、マヘリアはついにブレイク。1950年にはゴスペル・ミュージシャンとして初のカーネギー・ホール公演を開催。またこの年リリースした「きよしこの夜」は、遠くデンマークでも大ヒット。噂はヨーロッパ中に響いて、52年には初のヨーロッパ・ツアーを行いました。
54年には、コロムビア・レコードへ移籍して、ますます活動の幅を広げます。
教会で歌うことにこだわり、頑なに断り続けたラジオやテレビへも出演もするようになり、花屋の経営に乗り出すなど「商業主義」と批判されることもしばしば。しかし58年にニュー・ポート・ジャズ・フェスティヴァル出演するとジャズ・ファンを圧倒。
60年代は自身経験した差別へと立ち向かう姿勢を示し、公民権運動に積極的にかかわっていきます。61年、ケネディ大統領の就任式で歌い、63年には25万人が集った「ワシントン大行進」に参加。あのキング牧師の有名な演説前に歌声を披露して大観衆を魅了しました。1971年に初来日公演が行われますが、翌年の1月27日、60歳の若さで星となってしまいました。その葬儀では、かつてマヘリアがキング牧師とのお別れに歌った曲「プレシャス・ロード, テイク・マイ・ハンド」を、アレサ・フランクリンが歌い捧げました。
マヘリア・ジャクソンのアルバム『きよしこの夜』
SIDE A
「もろびとこぞりて」
「あめにはさかえ」
「ベツレヘムの小さな町で」
「あめなる神には」
「シルバー・ベル」
「ホワイト・クリスマス」
SIDE B
「神のみ子はこよいしも」
「まきびと羊を」
「ハッピー・バースデイ・アワー・ロード」
「耳をすましてごらん」
「エサイの根より」
「きよしこの夜」
マヘリア・ジャクソンのアルバム『きよしこの夜』いかがでしょうか?
ちなみに、1963年8月ワシントンで行われたキング牧師の有名な演説「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」、実は別な原稿が用意されてのですが、傍らにいたマヘリア・ジャクソンに「あの夢の話をして」と促され、語り出したものだったのだそうです。
33rpm『きよしこの夜』マヘリア・ジャクソン
●ON AIR:2023年12月23日(土)21:00~21:55