2023.9.02
シティポップの夜明け前
70’sジャパニーズPOPの名作から
33rpm SEASON III(2023年9月9日OA)No.185
五輪真弓『風のない世界』
アナログ音源専門プログラム「33rpm」。
9月は今ブームのシティポップ、その夜明け前、70年代ジャパニーズ・ポップスをフィーチャ―します。ビフォー・シティーポップ「BC 70`s」今回は、女性シンガー・ソングライターの草分け、五輪真弓が1973年にリリースしたアルバム『風のない世界』です。
1960年代、日本の若者が熱中したフォーク・ソングは、70年代に入ると新しいサウンドを吸収し始め、やがてニュー・ミュージックやシティポップへと変化していきます。今月はその過渡期ともいえる時期の音楽をいくつかご紹介します。
五輪真弓は1951年1月24日東京都中野区で生まれました。
音楽好きな父親の影響から、歌謡曲、洋楽ヒット、そしてビートルズと音楽に親しみ育ちます。高校に入ってギターを始め、卒業する3年生のための送別会で全校生徒の前で歌ったのが人生初ライヴ。2年生になると、女性フォークデュオ、ファンシー・フリー・シンガーズで活動、TVにも出演しました。高校を卒業した後は英語の専門学校へ入りますが、半年で退学して音楽活動を始めます。
銀座や新宿で弾き語りのアルバイトをしながら、渋谷の小劇場ジャン・ジャンなどで活動。またこの頃米軍キャンプまわりをして、「テネシーワルツ」を歌うと大好評を得たそうです。フォークの登竜門、ニッポン放送「フォークビレッジ」に出演したのがきっかけでデビューが決定。オリジナル曲を作り始め、1972年アメリカへ渡り、およそ1か月間アルバムの制作に入ります。ロサンジェルスで行われたレコーディングには、憧れのキャロル・キングも参加してくれました。
1972年10月、CBSソニーは彼女のためのレーベルを作って、シングル、アルバムを同時リリース。“和製キャロル・キング”と呼ばれ、アルバム『五輪真弓/少女』は大ヒット。
2ndアルバム『風のない世界』も再びロサンジェルスのクリスタル・サウンド・スタジオで録音され、キャロル・キングやデヴィッド・キャンベルが参加。シングル「煙草のけむり」がヒットしました。また74年には、ダニー・コーチマー、ラス・カンケルはじめ「ザ・セクション」のメンバーに加え、ラリー・カールトンも参加したアルバム『時をみつめて』を発表。
4作目『MAYUMlTY(マユミティー)/うつろな愛』は、山の中の一軒家で鈴木茂や細野晴臣らとレコーディング、これを絶賛したフランスCBSからのオファーでフランスへわたり、ヨーロッパ・デビュー。ヨーロッパでの経験から、「母国の音楽にこそオリジナリティがある」と気づかされた彼女は、歌謡曲寄りの「さよならだけは言わないで」をヒットさせ、ファン層を拡大しました。そして80年のシングル「恋人よ」で、とうとうオリコンチャート1位を獲得、3週連続で首位に居座り、日本レコード大賞金賞を受賞しました。
84年にパリ郊外の教会で結婚し、所属事務所から独立。85年に長男を出産してからは緩やかな活動にはなりますが、ほぼ毎年新作をリリースしています。96年には育児専念のためコンサート活動を一時休止、そして2003年に再開しました。その後も様々な活動を続け、インドネシアで「心の友」が国民的ヒットしたことで表彰されました。2022年10月にはデビュー50周年を迎え、様々な企画が今も展開されています。
五輪真弓のアルバム『風のない世界』
SIDE A
「風のない世界」
「黒猫とゆりかご」
「昨日までの想い出」
「何も言えない」
「水に沈みゆく影」
SIDE B
「煙草のけむり」
「赤毛の犬」
「家」
「桜の季節」
「夏のおもかげ」
五輪真弓のアルバム『風のない世界』いかがでしょうか?
ちなみに、海外レコーディングや海外デビューなど、画期的な活動を続けた五輪真弓。代表曲「恋人よ」は、スランプを脱するため、あえて歌謡曲にチャレンジした結果なのだそうです。
★五輪真弓 オフィシャル
33rpm『風のない世界』五輪真弓
●ON AIR:2023年9月9日(土)21:00~21:55